大腸がん手術後の食事

ストーマ

大腸がんの手術後、退院してからの食事をどうしようかと心配されている方は、いらっしゃるのではないでしょうか。手術から間もない時期は、食物繊維が多い食べ物や、消化しにくい食べ物は避けると良いと言われます。

ここでは、何が消化に良い食べ物なのか、しばらくは控えるべき食べ物は何か、具体的な食材をご紹介いたします。食材を参考にどういった食事内容にしていくかは、今までの習慣やご自身の嗜好などもありますので、病院で栄養士の方と相談しながら決めていくことをおすすめします。

食材の消化における特性を知ることで、体の回復に合わせて食事を元に戻していくためのヒントとしていただければと思います。

手術後1~2週間の食事

術後すぐは水分のみの摂取ですが、2~3日目に流動食、術後1~2週間は五分がゆから全がゆ程度へと、体調に応じて少しずつ元に戻していきます。おかずは、噛んだだけでつぶせる程度にやわらかく調理した野菜や魚の煮物などにします。

手術後1~3ヶ月間の食事

手術後しばらくは、腸のぜん動運動がにぶくなり、胃や小腸を通過した食べ物のカスを便にする動きが悪くなっています。そのため、下痢や頻便、便秘などが起こりやすくなります。消化の良いものを中心に、少量ずつ食べることから始めることで、体の回復と食事内容を調整していきましょう。

また、手術後、1ヶ月~3ヶ月の間は、腸閉塞を引き起こす可能性があるため、消化の悪い食品や、食物繊維の多い食品を摂りすぎないよう注意が必要です。量を少なくしたり、細かく刻むなど調理法を工夫して、ゆっくりとよく噛んで食べるようにしましょう。

腸閉塞とは、異物や炎症などにより腸管が塞がった状態のことをいいます。便やガスが1日以上全く出なくて苦しかったり、おなかの張りや痛みに加えて吐き気や嘔吐などの症状があるときは、腸閉塞の疑いがあります。できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

術後1ヶ月間の食事

主食は全がゆから柔らかめのごはん、柔らかく煮たうどんなどにし、徐々に通常食に戻します。おかずは、栄養バランスが偏らないよう肉、魚、野菜などをバランスよく摂り、やわらかく加熱調理することが基本となります。

食物繊維を多く含む食品について

食物繊維は、やわらかく加熱調理しても消化・吸収されにくいため、腸閉塞の原因とならないよう注意して食べる必要があります。食物繊維を多く含む食品は、根菜、海藻、きのこです。これらは、術後1ヶ月間は控えたほうがよく、術後1ヶ月が過ぎて体調がよくなってからも、根菜は繊維を断ち切るような切り方をして、消化器官に負担をかけないようにする必要があります。

術後1ヶ月間にとりたい食品

おかゆ、うどん、鶏のささみ、白身魚、豆腐、緑黄色野菜、牛乳、ヨーグルト、チーズ、缶詰の果物、麦茶、ゼリーなど

毎食1品程度摂りたい食品は、鶏肉や白身魚、大豆製品など消化しやすく、たんぱく質を多く含む食品です。

術後1ヶ月間は控えたい食品

玄米、中華麺、脂身の多い肉、根菜類(ごぼう、たけのこ、れんこんなど)、きのこ類、海藻類、漬物、繊維の多い果物(パイナップル、柑橘類など)、しらたき、香辛料、炭酸飲料、揚げ菓子など

食物繊維が多い食品、脂質の多い食品は、消化が悪く腸に負担がかかります。

術後1ヶ月間は避けたい食品

乳製品以外の発酵食品、香辛料などの刺激物、アイスクリームなどの冷たい食品、アルコール

上記の食品は、腸を刺激しすぎて消化不良を招き下痢をしやすくなるので、主治医の許可が出るまでは避けてください。

術後2~3ヶ月の食事

術後1ヶ月以降は、いろいろな食材や献立を試し、食べる量も少しずつ増やします。好ましい食品を中心としたメニューをなるべく柔らかく調理することから始め、控えめにしたほうが良い食べ物は、調理方法や量を工夫して少しずつメニューに採り入れ、徐々に元の食事に戻していきます。

繊維の多い野菜は、すりおろしたり細かく刻むことからスタートしてだんだん体を慣らしていき、油脂が多く消化が悪い食品は、スプーン1口、小皿1杯から試してみて、問題がなければ少しずつ量を増やすなど、体調をみながら徐々に調整しましょう。

1~2ヶ月たつと食欲が戻ってきますが、食べ過ぎるとおなかが張るので注意しましょう。食欲が戻ったからといって、腸の機能が回復したわけではありません。まずは、腹六分目を目安にし、術後2~3ヶ月で元の食事量に戻すように、少しずつ食べる量を増やします。

好ましい食品

皮なし鶏肉、ささみ、脂肪の少ない牛・豚肉・レバーなど
魚介あじ、かれい、すずき、さけ、たら、ひらめ、かき、はんぺんなど
鶏卵、うずら卵など
豆腐、やわらかい煮豆、ひきわり納豆、きなこなど
乳製品牛乳、ヨーグルト、乳酸飲料、チーズなど
穀類粥、軟飯、うどん、パン、マカロニなど
いもじゃがいも、さといも、長芋、大和芋など
果物缶詰、りんご、熟したバナナ、桃、洋梨など
菓子ビスケット、カステラ、ゼリーなど
油脂植物油、バター、マーガリン、生クリームなど
野菜やわらかく煮た野菜(かぶ、かぼちゃ、カリフラワー、キャベツ、大根、トマト、なす、白菜、ブロッコリーなど)、梅干しなど
飲み物番茶、麦茶、ジュース、薄いお茶、薄い紅茶、薄いコーヒーなど

控えめにしたほうが良い食品

油の多い料理(カツ、ビーフステーキなど)、脂肪の多い肉(バラ肉、ハム、ベーコンなど)
魚介貝類、いか、たこ、すじこ、かまぼこ、干物、佃煮、塩辛など
大豆、枝豆など
穀類玄米、赤飯、玄米パン、胚芽入りパンなど、油を多く使用した料理(ラーメン、チャーハン、焼きそばなど)
いも繊維の多いさつまいも、こんにゃく、しらたきなど
果物繊維が多く酸味の強い果物(パイナップル、柑橘類など)、どライフルーツなど
菓子揚げ菓子、辛いせんべい、豆菓子など
油脂ラード、ヘッド、油を多く使う料理(天ぷら、フライなど)
野菜繊維の多い野菜(ごぼう、たけのこ、ねぎ、れんこん、ふき、ぜんまい、わらび、きのこなど)、香りの強い野菜(うど、にら、にんにく、みょうがなど)、かたい漬物(たくあん、つぼ漬けなど)
海藻こんぶ、のり、ひじき、わかめなど
調味料辛子、カレー粉、わさびなどの香辛料の使いすぎ
飲み物炭酸飲料、アルコール、濃いお茶、濃いコーヒーなど

食事は楽しく

大腸がんの手術を終えた後、基本的には食事制限はありません。1日3食を基本とし、ごはんなどの主食、肉や魚、卵、大豆などのたんぱく質主体のおかず、野菜などをバランスよく摂ることが大切です。食欲がないときやお腹の調子が悪い時は、ポタージュスープやゼリー、豆腐や茶碗蒸しなど口当たりがよく消化の良いメニューを無理せず摂りましょう。

食事は元気の源です。食べたいものは、まずは少量から試してみましょう。腹6分目~7分目にしておくと大腸への負担も軽くなります。ゆっくりとよく噛んで食べることは、腸にとって大きな助けとなります。

間食で工夫する

1回に食べる量が腸に負担となってしまう場合は、2~3回の間食を追加し、食事を1日に5回~6回に分けて食べましょう。 間食はビスケット、カステラ、ゼリーなどの甘いお菓子や、おにぎりやパン、ゆで卵、ヨーグルトなどもおすすめです。

外食について

腸の機能が低下していると下痢をしやすいので、メニュー選びには注意しましょう。香辛料などの刺激物や消化が悪い脂っこいものは避け、和食などあっさりしたメニューがおすすめです。量が多い場合は残し、腹八分目より少なめにしたほうが安心です。

お腹の調子が悪いとき

体調が回復するまでには、下痢や便秘、頻便といった症状が起こることがあります。対策を事前に知っておくことで、体調の変化に余裕を持って対応することができます。

下痢のとき

下痢によって体から水分が失われていますので、少しずつこまめに水分を補給し、脱水を防ぎましょう。一度に大量に飲むと、かえって腸を刺激しますので、少しずつこまめに飲むようにします。常温の水か湯冷まし、スポーツ飲料や経口補水液がおすすめです。

食事は、消化の良い食品を選び、柔らかい食材でも、少しずつ口に入れて、よく噛んで食べることで、消化を助けることができます。冷たい飲み物、牛乳、カフェインやアルコールを含む飲み物は、下痢や脱水を悪化させますので避け、一回の食事量を少なくして胃腸への負担を軽減しましょう。

便秘のとき

便秘は、手術の影響で腸の機能が低下して、便を送り出すスピードが遅くなったり、手術した部位を便がスムーズに通過できなかったりするために起こります。ガスがたまることもあります。便秘が続くと、吐き気や食欲不振、ガスがたまることによるおなかの張りなどの不快感を感じることもあります。

適度な運動は、腸のぜん動運動を促進します。ウォーキングやストレッチなどを行うと腸が刺激されて、排便をうながす効果があります。術後の傷の痛みがとれ、主治医の許可が出たら、体を動かしましょう。

お風呂で湯船につかることでリラックスでき、お腹を温めることで腸の動きがよくなり、排便を促す効果があります。

食べ物による影響

食べ物による影響を知っておくこともおすすめです。タンパク質の多い肉類や甲殻類、香味野菜、豆類、発酵食品、アルコールはおならや便のにおいが強くなる傾向があります。腸内での発酵をうながす食品や食物繊維が多いものは、ガスがたまったり、おならがでやすくなったりします。まったくとらないと栄養が不足することもありますので、食べる量を控えめにするなどの方法で工夫しましょう。

便がやわらかくなりやすい食品炭酸飲料、ビール、お酒、アイスクリーム、ぶどう、もも、みかん、生卵
便がかたくなりやすい食品米飯、もち、うどん、パン、白身魚
消化の悪い食品こんぶ、わかめ、きのこ類、れんこん、ごぼう、たけのこ 等
ガスを発生させやすい食品くり、さつまいも、やまいも、ごぼう、大根、きゃべつ、カリフラワー、ねぎ、豆類、えび、かに、貝、ラーメン、炭酸飲料、ビール 等
ガス発生を抑える食品乳酸飲料、ヨーグルト、パセリ、レモン 等
臭いが強くなる食品にら、アスパラガス、ねぎ、にんにく、たまねぎ、香りの強いチーズ、貝、かに、えび、卵 ピーナツ 等
臭いを抑える食品レモン、パセリ、オレンジシュース、ヨーグルト 等
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